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会期最終日のアート展SENSE ISLAND/LANDを見に、横須賀の東に浮かぶ無人島「猿島」に行ってきました。島自身にとても興味があったのですが、これまでタイミングがなく、期限付きのこの機会にやっと念願かないました。

島に潜っていく時に最初に出会う作品。水戸部春菜「痕を起こす」

島内探検ツアーに参加し、兵舎や弾薬庫も見学させていただき1周、さらにもう1周うろうろと。
とても魅力的な島。自然と人為の痕。そしてその重たい意味を持つ空間にアートがどこまで向き合うのか、というあたりも興味ポイントでした。

地形や風景に影響を受けるなどして、その場所でしか成立しないアートを「サイト・スペシフィック・アート」と呼びます。作品が風景にどう働きかけるか、というのは鑑賞対象として様々に楽しいものです。これまでの体験からいくつか備忘録的にあげてみます。

マ・ヤンソン/MADアーキテクツ「Tunnel of Light」“ライトケーブ(光の洞窟)” (水) @越後妻有

越後妻有の清津峡渓谷トンネル鑑賞は、想像を超えた体験でした。柱状節理の自然景観はほんっとうに素晴らしい。この貴重な自然資源を国民にひろく利用してもらうためにトンネルを開坑したらしいですが、20年を経て、大地の芸術祭でアートサイトとして再出発したということです。長い長いトンネルの先、期待外れということは許されませんが、決して裏切らない風景でした。冬の風景も見てみたい!

750mもあるトンネル。飾りのないトンネルはそれだけで美しいのですが、
とはいえ、アートという励ましがないと、ちょっと怖いでしょうか。かつてはどうだったのでしょう?!

ちょっと興味をそそられて箱根に会いに行ってみたのは「ピンクの猫の小林さん」です。

飯川雄大「デコレータークラブ−ピンクの猫の小林さん−」@彫刻の森美術館

自然に溶け込まないので遠くから見える。でも、どこから見ても、全貌が見えない、絶妙なところに隠れています。気になる。そして追ってしまう。すっかり術中にはまった感じでした。
「デコレータークラブ」とは藻や石で身を隠す蟹のことらしく、シリーズのタイトルとなっていました。千葉や大阪などその存在は転々と移動し、最後に箱根の森にやってきたといいます。

「隠れられてないよね」と言いながら、、、

那須の「水庭」は建築家が設計し建築雑誌に掲載されていたので、とてもインパクトがありました。そしてこの環境はどれくらいの期間成立しうるものなのかなあと、少し穿った目で見に行くわけですが、、、

石上純也「水庭」@アートビオトープ那須(オーナーが変わる前)

とても幻想的な空間で、美しかったです。もともとあった田んぼの取水方法、水量の調節技術を活かして水を張り、隣地のレストラン建設で伐らねばならない木々を移植利用とのこと。葉や水の動き、曲線の連続などやわらかい印象だけではなく、不安定の中の緊張感もあるのかしらと。アートというのはこういうものなのだなあと、納得させられました。

小田原の江之浦測候所も是非体感したかった場所。直島にも作品が多い杉本博司さんが構想を手掛け、「この地から世界に向けて、日本文化の精髄を発信しようと企てている」とのこと。ミカンのなる季節を狙い訪れましたが、土地周辺の景色を取り込んだそれぞれの空間に息をのみました。

敷地をどんどん下るのですが、帰りののぼりが怖くないくらい、先へ先へと導かれます。
写真右の斜面上に主要施設。敷地の一部であるミカン畑を含む小田原の景色を、空を、様々なフレームから眺めることになります。

言葉がないほど、細部まで気が行き届いていました。「自然な」状態を保つために管理は人知れず行われているかと思いますが、実は鑑賞者も「人の手」の気配は常に感じていて、そこもここちよいと感じる要因の一つなのだと思います。

お仕事として訪れているベネッセアートサイト直島は「サイト・スペシフィック・アート」の宝庫です。どれかを選ぶことは難しいので、あえて掲載は差し控えます。

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